★花とことば★


 長く厳しい冬を乗り越えた植物たちが、一斉に花開く季節『春』がやってきました。

春の 代表的な花と言えば、やはり『桜』でしょうか。
その中でも最もポピュラーな品種は『染井吉野』。
江戸(染井:現在の豊島区)の植木屋が、もともとは桜の名所であった奈良の『吉野山』ちなんで『吉野桜』と売り出しましたが、吉野山に生育していたのが実際は『山桜』であったため、明治33年に『染井吉野』と
命名されたとか。


花や樹木の名前に、面白いエピソードが隠されていることは多々ありますが、逆に『桜』に関しては、色々なことわざやいいまわしに用いられる事が多いようです。
例えば、『明日ありと思う心の仇桜』『三日見ぬ間の桜』どちらもこの世の無常や、華やかさを説くことわざです。 あっという間に満開になり、瞬く間に散ってしまう。圧倒的な美しさで咲くからこそ、散り際のはかなさが際立つ桜ならではの印象からでしょう。しかし中には面白い言葉もあります。
例えば、『姥桜』という言葉を耳にしたことはないでしょうか。歳を召しても妖しい魅力がある女性をさす場合もありますが、実は葉より先に花開く桜の通称なのです。何でも『葉がない』と『歯がない』を掛けてできた言葉だとか。
なぜ爺桜でないのでしょうか・・・。そういえば、『立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花』『大和撫子』という言葉もあるように、女性を花に見立てる、といった傾向は昔からあるようです。日本神話に登場する木花開耶姫の名前は『花が咲くように美しい女性』といった意味をさすといわれていますし、かの有名な源氏物語でも、女性たちには皆花の名前が付いていました。


そこで、『花』のつく言葉で女性の半生を綴ってみました。

〔蝶よ花よと育てられ、花も恥らう乙女となりて、花も実もある紳士と出会うが、花は折りたし梢は高し、熱い想いも花と散る。
いつか花咲くときを待ち、花に嵐を乗り越えて、社交界の花となるが、
高嶺の花とささやかれ、常初花も過去となり、ついには、花より団子の壁の花。
同期の桜とあの頃が花だったわ、と思い出話に花咲かす。
若手に花を持たせる時が来て、満開の花の便りに誘われて、
『花は根に鳥は古巣に帰りましょう』
と ふるさとの他に降り立てば、花吹雪の中 そっと空知らぬ雫を拭う春。〕